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都市部の高齢化対策で提言、特養の整備手法を改善へ
2013年8月27日
「老人福祉圏域」という言葉を知っているだろうか。「どこにどれくらい特養が必要か」といった計画をつくる都道府県が設定するもので、東京都には13、大阪府には8、愛知県には12の圏域がある。特養の整備数は、各地域の要介護者数の見込みなどから得られるニーズを圏域ごとに積み上げて決められる。つまり、圏域の中だけのニーズを捉えて算出する仕組みだ。
東京都、特に多くの人が集まっている23区内では、他の都市部に比べても人口密度が極めて高く、高齢者が密集するように暮らしている。地価も高いため、特養を整備するための用地の確保は簡単ではない。その一方で、電車やバスをはじめとする交通網は高度に発達しており、圏域を超えた移動は比較的簡単といえる。こうした事情は他の都市部とは大きく異なるもので、東京都が特殊な環境にあることは想像に難しくないだろう。
厚労省が27日に提案したのは、圏域を超えてニーズを調整し、特養の整備数を決められるようにすること。東京都の特殊な事情を勘案すると、圏域内の狭い範囲だけを視野に整備数を設定するのは、もはや合理的とは言えないという判断だ。東京都だけ特別に認められる措置ではないが、他の都市部では1つの政令指定都市で1つの圏域が設定されていることなどから、圏域を超えたニーズの調整を求める声はあがっていないという。
厚労省は、圏域を超えて整備数の調整を行う場合は、都道府県がつくる計画に利用者の流出・流入量を明記させる考え。また、「例えば、特養の入所判定にあたって、流出元の圏域の要介護者が流入先の圏域の施設に入所しやすくなるような運用も認めるべきではないか」という提案も行っている。
一方、都市部の高齢者を地価の安い地方の施設で受け入れる構想については、「入居者本人の意思の尊重が大前提。重度の要介護になったら、本人の意思にかかわらず、家族や地域から切り離されて地方の施設に入所させられるといったことにならないような配慮が特に求められる」と指摘。とりわけ、地方が不特定多数の都市部からの受け入れを期待して特養を整備することについては、「結果的に都市部の高齢者に地方の施設入所を強いる形になる」として慎重なスタンスをとった。
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